長浜ラーメンと言えば「元祖長浜屋」。博多ラーメンが有名だが、長浜ラーメン＝博多ラーメンではない。何が違うのか？と言われると説明が難しいが、厳密には違うラーメンだ。違いを知りたければ、是非博多へ行き食べ比べてみてほしい。　

　博多のご当地ラーメンである「長浜ラーメン」は博多漁港のある長浜エリアで生まれたラーメン。1953年（昭和28年）に開業した屋台「元祖長浜屋」がその発祥と言われている。開業者の榊原松雄さんが、戦後台湾人から作り方を教わり屋台を出店させた。当初博多駅前で商売を始めたが全く売れず、その後中州（博多の繁華街）、大浜（魚市場）へ移動、市場で働く人々の朝食となり、やっと繁盛し始める。1955年（昭和30年）に魚市場が長浜に移転、それに伴い屋台も長浜に移動。当初は市場関係者のみの客層だったが、地元新聞で「受験生が長浜屋でラーメンを食べて合格した」というエピソードが掲載され、これをキッカケに頻繁にメディアに登場するようになり、一般客にも広がっていった。そして現在に至り、博多の無形文化財のようになっている。福岡市内には長浜ラーメンを名乗る店が多いが、元祖長浜屋は特別な存在感があり「ガンソ」「ガンナガ」と親しみを持って呼ばれ、地元のソウルフードとなっている。

　長浜ラーメンの特徴は、あっさりとした豚骨スープと細麺。これなら市場で働く人たちが朝食として食べやすい。それと追加トッピングの「替え玉」「替え」。今では全国的に知られるようになったが、麺やチャーシューを有料でお代わりできるシステム。替え玉＝麺一玉、替え肉＝細切りチャーシュー（酒のつまみとしても人気）。現在は食券を買って注文するが、以前はその場で注文していた。

　長浜ラーメンの強みは、「ラーメン」「替え玉」「替え肉」のメニュー３品のみで勝負していることと、注文を受けてからラーメンやトッピングが出てくるまでのスピードである。忙しい朝の市場関係者にピッタリであり、これなら客の回転数も稼げる無駄のない飲食店モデルなのである。よって、なるべく余計な時間を費やしたくない兄ちゃん（店主または従業員）と客との絶妙な掛け合いが生まれる。一見さんの旅行者ではちょっと難しい、地元の常連客ならではの店でのやり取りが以下である。

兄ちゃん「どうぞ」と席と注文を促す。

客「べたかた」（油2コクありでかたい麺）と注文

客ラーメン食べる

客「かた玉」（かたい麺）と追加注文

◎シンプルな注文で何と「５段階の麺のかたさ、３段階の油の量」を好みに合わせ注文するのである。

油2コクで麺のかたさ・・・・・・・べた生、べたかた、べた、べたやわ、べたずん

油1コク（基本）で麺のかたさ・・・　生　、　かた、　なみ、　やわ　、ずんだれ

油なしで麺のかたさ・・・・・・・・なし生、かた玉、油なし、なしやわ、なしずん

替え玉・・・・・・・・・・・・・・　生玉、かた玉、玉いっちょ、やわ玉、ずん玉

上記を使い分け通る声で間髪を入れない間がポイントです。（ネット情報より抜粋しています）

わたしは100回近く来ていますが、よそ者ですので「麺ふつう」で、そして「替え玉ふつう」と注文しています。最近は外国人の店員が多いので、これで十分伝わっています。

※「ラーメン」550円　「替え玉」150円　「替え肉」150円　2021。8月現在

　元祖長浜屋によく行くようになったのは今から四半世紀前から。当時は九州の広告代理店で番組やCMのプロデューサーをしていていました。天神や中州でしこたま飲んだ後、長浜で〆のラーメンを食べるのが定番でした。まだ若かったので・・・コロナ禍もない、いい時代でした。今でも思い出されるのは、当時売り出し中であったタレントの山口もえ（成城大学在学中の頃、現在爆笑問題・田中裕二の妻）を夜中に長浜屋へ連れて行ったことです。CM撮影のため博多に滞在していて、山口もえがラーメンが食べたいと言い出し、タクシーを呼んで長浜に向かいました。すでに午前0時は過ぎていました。タクシーが長浜へ到着したとき、深夜にもかかわらず若い人たちでごった返していました。そんな中、だれかが山口もえに気づき大騒ぎになってしまいました。当然、長浜屋の中も大騒ぎになり、その人気ぶりにびっくりしました。幸い、その頃はまだスマホがなかったので写真を無礼に撮りまくる人はいませんでしたが、だれこのおじさん？とわたしを白い目で見ている人がいたのを覚えています。実は、わたしは山口もえのことは良く知らず、ちょっと可愛いバラドルぐらいしか思っていませんでした。テレビのチカラ恐るべし。山口もえのおかげで、長浜屋のいい思い出ができました。

元祖長浜屋

福岡市中央区長浜2-5-25　トラストパーク長浜3-1F

092-711-8154