#映画「罪の声」~おススメ映画


罪の声 映画チラシ
映画「罪の声」チラシより

 1984年から1985年(昭和59年から60年)、大阪・兵庫を舞台に食品会社を標的とした企業脅迫事件が起こった。グリコ・森永事件と呼ばれているが、犯人が「かい人21面相」を名乗ったことから「かい人21面相事件」とも呼ばれている。2000年(平成12年)に時効となり、警視庁広域重要指定事件ではじめての未解決事件、つまり完全犯罪となったわけだ。

 江崎グリコ社長の誘拐事件にはじまり、脅迫・放火、その後標的を変え丸大食品、森永製菓、ハウス食品など食品企業を次々脅迫し、同時にマスコミ各社に挑戦状を送るなどし、遂には毒入り菓子をばらまくなど社会一般を巻き込んだ。いわゆる「劇場型犯罪」と呼ばれる類の事件であった。結局犯人は捕まっておらず、何かしら関連した犯人一味のひとりとして、似顔絵「きつね目の男」が世間を騒がせた。

 当時、私は大学を卒業したばかりの社会人1年生の頃だった。この頃には別の事件「三浦和義のロス疑惑」もあり、思うと世相を象徴するようなことばかりが起こっていた。平成前夜、昭和末期の大事件として記憶に深く刻まれている。

 映画「罪の声」は、グリコ・森永事件をモチーフとしたフィクション大作だ。真相を突き止めようとする新聞記者・阿久津英士(小栗旬)と子供の頃、知らずに犯罪に加担させられていた・曽根俊也(星野源)が反発しながらも次第に友情を育みながら真相に迫っていく。原作は、2016年に「週刊文春」ミステリーベスト10で1位に輝いた塩田武士のベストセラー小説。事件の真相と犯人像に迫るストーリーは、「本当にそうだったのでは?」と思わせるリアリティに溢れている。

 本作の最も素晴らしい点は、犯罪の真相に迫っていくことだけではなく、罪なき罪を背負わされた3人の子供(当時)の人生に焦点をあてたところである。丁寧に無駄なく描かれて実に分かりやすく、関係性も絶妙である。142分の長尺のうえ派手なアクションも無い映画だが、どんどん観るものを引き付けていく演出である。監督が「今、会いにゆきます」「麒麟の翼」「ビリギャル」の土井裕泰ということも納得である。偉そうに言わせてもらえば、ただただ「上手い!」の一言である。

 私にとって、2020年に観た邦画ナンバーワンは、現時点、「罪の声」である。だから、絶対おススメです。観るべし!!

映画「罪の声」

  • 原作 塩田武士 「罪の声」講談社文庫
  • 監督 土井裕泰
  • 脚本 野木亜紀子
  • 出演 小栗旬 星野源 松重豊 火野正平 梶芽衣子 宇崎竜童 他
  • 配給 東宝 2020年10月30日~